不動産購入における「仲介手数料無料」という言葉は、非常に魅力的に響きます。しかし、安易に飛びついてしまうと、後々後悔する可能性も否定できません。
この記事では、仲介手数料無料の仕組みと注意すべき点を解説し、「仲介手数料無料」が必ずしも良い選択とは言えない理由を深掘りします。
まず、仲介手数料の計算式を改めて確認しましょう。宅地建物取引業法により、仲介手数料の上限額は以下のように定められています。
200万円以下の場合: 売買価格(税抜) × 5% + 消費税
200万円超400万円以下の場合: 売買価格(税抜) × 4% + 2万円 + 消費税
400万円超の場合: 売買価格(税抜) × 3% + 6万円 + 消費税
この計算式は、不動産会社が受け取ることができる仲介手数料の上限を示しており、実際の仲介手数料は、不動産会社との交渉によって減額されることもあります。
※2024年7月より、低廉な空家等（物件価格が800万円以下の宅地建物）については、当該媒介に要する費用を勘案して、原則による上限を超えて報酬を受領できるようになりました（30万円の1.1倍が上限）。
次に、仲介手数料無料の仕組みです。これは大きく分けて3つのケースがあります。
売主からの手数料で賄うケース:
売主から仲介手数料を受け取れる場合、買主からの手数料を無料にすることがあります。この場合、不動産会社は両手仲介となり、本来、売主と買主の両方から手数料を得られます。
この手法は、不動産会社が売主と買主の両方と契約を結ぶことで、双方から手数料を得ることを目的としています。
自社物件であるケース:
不動産会社が売主である物件の場合、仲介手数料は発生しません。これは、不動産会社が仲介ではなく、売主として取引を行うためです。
このケースでは、不動産会社は仲介業務を行わないため、仲介手数料を請求する権利はありません。
他の名目で費用を徴収するケース:
仲介手数料を無料にする代わりに、事務手数料やコンサルティング費用などの名目で費用を徴収する場合があります。
この手法は、表面上は仲介手数料を無料に見せかけ、実際には別の名目で同等の費用を徴収するものです。
仲介手数料無料には、以下のような注意点があります。
物件の選択肢が狭まる:
仲介手数料無料の対象となる物件は、不動産会社が売主から手数料を得られる物件に限られる場合があります。そのため、希望の条件に合う物件が見つかりにくい可能性があります。
不動産会社は、自社の利益を優先するため、仲介手数料が無料になる物件を優先的に紹介する傾向があります。
サービスの質が低下する可能性:
仲介手数料が主な収入源である不動産会社にとって、無料は収益減となります。その場合、人件費などを削減しサービスの質が低下してしまう可能性も考えられます。
不動産会社は、無料サービスを提供する代わりに、他のサービスで利益を上げようとする可能性があります。
他の費用が発生する可能性:
仲介手数料が無料でも、他の名目で費用を請求される場合があります。結果的に、仲介手数料を支払う場合と変わらない費用がかかることもあります。
不動産会社は、仲介手数料以外の費用を高く設定することで、収益を確保しようとする可能性があります。
不動産会社の利益優先になる可能性:
売主から仲介手数料がもらえる物件を優先的に紹介される可能性があります。買主側の要望が二の次になるケースも考えられます。
不動産会社は、両手仲介を成立させるために、売主側の条件を優先する可能性があります。
物件の情報が少ない:
無料にする代わりに物件の情報をあまり開示しない可能性があります。
不動産会社は、無料サービスを提供する代わりに、情報提供を制限することで、コスト削減を図る可能性があります。
契約内容の説明不足:
契約を急かすあまり、契約内容の説明が不十分になる可能性があります。
不動産会社は、無料サービスを提供する代わりに、契約締結を急ぐことで、効率化を図る可能性があります。
無料になる条件が複雑である:
仲介手数料が無料になる条件が複雑で、分かりにくいケースがあります。
不動産会社は、無料サービスを宣伝するために、複雑な条件を設定することで、顧客を誘引しようとする可能性があります。
上記を踏まえ、仲介手数料無料が必ずしも良い選択とは言えない理由は以下の通りです。
●物件の選択肢が狭まり、希望の物件に出会えない可能性がある。
●サービスの質が低下し、不動産取引で損をする可能性がある。
●他の費用が発生し、結果的に費用が高くなる可能性がある。
●不動産会社の利益が優先され、買主側の要望が通らない可能性がある。
●物件の情報が少なく、購入後に後悔する可能性がある。
●契約内容の説明不足により、不利な条件で契約を結んでしまう可能性がある。
●無料になる条件が複雑で、後々トラブルになる可能性がある。
一方で、仲介手数料を支払うことで、以下のようなメリットが得られます。
◎豊富な物件情報から希望の物件を探せる。
◎専門的な知識と経験に基づいた質の高いサービスを受けられる。
◎安心して不動産取引を進められる。
◎買主側の要望を優先した交渉をしてもらえる。
◎様々な物件の情報を開示してもらえる。
◎契約内容を十分に説明してもらえる。
◎無料になる条件などを気にすることなく、安心して取引できる。
仲介手数料無料は、一見するとお得に思えますが、注意すべき点がいくつか存在します。不動産取引は、人生の中でも大きな買い物です。仲介手数料の金額だけでなく、不動産会社の信頼性やサービスの質も考慮して、慎重に判断することが重要です。
