2025年10月26日

「違反物件」と「既存不適格物件」は似て非なるもの!リスクと購入判断の注意点

―― 福島不動産株式会社がお届けする、知っておきたい不動産の基礎知識 ――

はじめに:なぜ「法に適合しない建物」が存在するのか?

中古住宅を探していると、「建築基準法に適合していない部分がある」と聞くことがあるかもしれません。しかし、この「不適合」には、法的な意味合いが大きく異なる2つのパターンがあるのをご存知でしょうか?
それが、「違反物件(違法建築物)」と「既存不適格物件(きぞんふてきかくぶっけん)」です。
一見似ていますが、今後の利用や建て替え、そして金融機関の評価において、全く異なるリスクを伴います。
安易に同じものとして扱わず、その違いを正しく理解することが、安心できる不動産選びの鍵となります。

1. 違反物件(違法建築物)

違反物件(違法建築物)の定義と重大なリスク違反物件とは、建築基準法や都市計画法などの法令が施行されているにもかかわらず、その規定に違反して建築された建物、または建築後に無許可で増改築を行った結果、法令に適合しなくなった建物を指します。
 
【定義と成り立ち】
建築時の適法性: 最初から法律に違反している。
具体例:
・建築確認申請を行わずに建てた建物(無許可建築)。
・後からベランダやサンルームを設置した結果、建ぺい率・容積率をオーバーさせた部分。
・登記上の階数や面積と、実際の建物の構造が異なっているケース。
 
【重大なリスク】
・行政による是正命令の可能性: 特定行政庁(自治体など)から、取り壊しや改築などの是正措置を命じられる可能性があります。命令に従わない場合、罰則が科されることもあります。
・住宅ローンの利用不可: 金融機関は、是正命令のリスクがある違反物件を担保として認めません。原則として、住宅ローンや不動産投資ローンは利用できず、現金一括での購入が必須となるケースがほとんどです。このため、市場での売却も極めて困難になります。

2. 既存不適格物件

既存不適格物件の定義と将来的な制限既存不適格物件とは、建築された時点では当時の法令に適合していたものの、その後の法改正や都市計画の変更によって、現在の基準に適合しなくなってしまった建物を指します。
 
【定義と成り立ち】
建築時の適法性: 建築当時は合法であった。
具体例:
・1981年の新耐震基準改正前に建てられた、現在の耐震基準に適合しなくなった旧耐震基準の建物。
・建築後に周辺の都市計画が変更され、容積率や高さ制限が厳しくなった結果、現行の基準を超えてしまった建物。
・現行法で必須の接道義務(原則幅4m以上の道路に2m以上接すること)が、建築当時は緩やかだったため、現在の基準を満たしていない建物。
 
【リスクと制限(現状維持は可能)】
・現状利用は問題なし: 違反物件とは異なり、既存不適格物件は現状のまま住み続けることや賃貸することは問題ありません。行政から即座に是正命令を受けることはありません。
・建て替え、増改築時の「遡及適用(そきゅうてきよう)」:既存不適格物件を建て替えたり、大規模な増改築を行う場合、原則として現行の建築基準法に適合させる必要があります。例えば、現行の容積率をオーバーしている建物は、建て替える際に今より小さい建物になってしまう可能性が高いです。
・金融機関の評価と融資:既存不適格物件であっても、住宅ローンや投資ローンの利用自体は可能です。ただし、将来の建て替えリスクや、担保価値が「現行法に適合した場合の再建築規模」で評価されるため、一般の物件よりも担保評価が低くなり、融資審査が厳しくなる傾向があります。

3. 【徹底比較】決定的な違いは「いつ」法に適合しなくなったか

比較項目 違反物件(違法建築物) 既存不適格物件
法に適合しないタイミング 建築時または増改築時 (意図的な違反) 法改正後 (やむを得ない不適合)
行政からの是正命令 あり(是正や撤去のリスク) 原則なし(倒壊の危険性など著しい場合を除く)
住宅ローンの利用 原則不可(担保価値ゼロ評価) 利用可能だが審査は厳しくなる場合もあり
建て替え時の制限 現行法への是正が必須。 現行法への是正が必須。同規模の建物は建てられない可能性が高い。

4. まとめ

福島不動産株式会社が「調査」にこだわる理由
中古物件の購入で最も大切なのは、「見えないリスク」を事前に把握することです。
私たち福島不動産株式会社は、お客様が将来にわたって安心してお住まいいただけるよう、この「見えないリスク」の徹底的な調査に力を入れています。
 
福島不動産が実践する「安心のための物件調査」
・公的書類の徹底検証: 建築確認通知書や検査済証の有無、公図や登記簿謄本と現地の状況を照らし合わせ、「違反物件」の可能性がないかを確認します。
・既存不適格項目の洗い出し: 建築時期と現行法の照合を行い、特に「耐震基準」や「接道義務」など、お客様の生活に直結する既存不適格項目を明確に洗い出します。
・将来リスクの具体化: 単に「不適格です」で終わらせません。もし建て替えることになったら、「今より〇〇坪小さくなります」「駐車スペースが確保できなくなります」など、具体的な将来の制約まで分かりやすくご説明いたします。
福島県内の古い物件や、増改築がされている物件の中には、既存不適格な部分があるのは当然のことです。
だからこそ、私たち専門家がリスクを隠さず、正直にお話しすることが、信頼につながると考えます。
物件に関するご不明な点やご不安なことがあれば、どんなことでもお気軽に福島不動産株式会社にご相談ください。
専門知識と徹底した調査で、お客様の不動産選びをサポートいたします。
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